食:肉を食べることと食べないこと

世界中で肉の消費が増えている。その結果、地球の温暖化への影響が指摘されるようになった。また、アニマルウェルフェア(動物の幸福)という考え方も広まりつつある。食生活は、数世紀ではなく、数十年単位で変わる。


加速化する技術開発と社会の受け入れ

人口減の日本ではなかなか実感できないが、世界の人口は増加し続けていて、特に、農耕可能な土地の7割を占有し、サプライチェーンも含めると地球の温室効果の5割の原因となっている畜産については、新技術が投入される速度は高まる。 間近に迫っているのは、「遺伝子編集」による畜産。最先端を走っている米国では、遺伝子編集は「品種改良を加速させている」という考え方で、植物については規制はゆるやかだ。動物については、例えば、生まれつきツノのない牛や病気になりにくい子ブタについて議論が進んでいる。 代用肉も思ったより近い未来にある。昆虫は、環境への影響を考えると、圧倒的なパフォーマンスの良さが注目されている。また、食品を培養だけで作り出す「細胞農業」についても、投資が拡大している。肉は農場ではなく、「最初から」工場で作られるかもしれない。

いまのところ、代用肉で作ったハンバーガーは数万円という価格だが、近い未来には数百円になることは間違いない。 こうした話をすると、不安を感じたり、気持ち悪く思ったりするかもしれない。けれども、10から20年後には、何も考えず、普通に「新しい肉」を手にとっているかもしれない。なぜなら、私たちは、いま手にとっているものについて、どれほど考えているだろうか。

Farm to Forkを感じること


自分が口にしているものは、どのように育てられ、加工され、運ばれてここまできたのか。その間に何が起こっているのか。経済、環境、ウェルフェアなど。テクノロジーは急速に変わる、農場が工場に変わりつつあるとしたら、それを知っておくこと。

Graphic by Eri Sato