「地域通貨」は、地域限定のポイントの形で20年前に現れたが、日々の暮らしにそれほど浸透しているわけではない。最近、デジタル化した「地域仮想通貨」が、地域の暮らしを大きく変える可能性を秘めている。 自治体、大学、企業などが発行、計画している地域仮想通貨は677種類(2017年4月19日)ある。
誰が何に使ったか分かるとどうなるか?
観光客がホテルで1万円を支払ったとき、その価値はひととおりではない。ホテルでは様々な費用が発生する。例えばリネンのクリーニング、朝食の提供など。これらが地域で行われると、ホテルからお金がそれぞれの事業者に支払われる。さらに食材が地域のものだと、また支払いが発生する。そうして観光客が支払った1万円は「何回転」か地域を回る。逆に、リネンや朝食を地域外に委託していると、1万円は「回転しない」。お金が回転しないとき、地域経済は「バケツから水が漏れている」。 紙のお金には、誰が何に使ったかの記録が、お金そのものには残らないので、上のようなことを知るためには「産業連関表」など特別な分析が必要になる。地域仮想通貨は、通貨に情報がくっついているので、お金の流れが見えるようになる。
また、地域のボランティア活動についても、誰が何をしたということを通貨で記録することが可能だ。記録を積み重ねていくと、どこでどのような信頼や関係が深まっているのかが見えるようになる。
量から質へ
地域仮想通貨は、経済の大きさや売上のような価値の「量」より、関係の深さといった価値の「質」を計ることに適している。野菜や魚が食卓に上るまで、誰がどのように価値をつけているのか。地域で信頼関係を重ねている小売はどこなのか。 これらは「関係資本」として、地域が持続していくときの大事な基盤となる。